1円で起業が出来るというのは嘘ではありませんが、会社を運営していくにあたっては様々な資金が必要です。起業家が最初に困るのはその資金調達です。
私自身も身一つから起業をして会社を大きくしてきた経験がありますので、資金調達の方法と開業資金をいかに節約するのか、リアルをお伝えしたいと思います。
目次
1, 起業にはどんな資金が必要になるか
昔は株式会社を設立するには資本金として1,000万円が必要でしたが、今は資本金1円でも設立が可能です。では1円あれば起業ができるのか…答えはNoです。設立し運営をするだけでも多くのお金がかかります。
1-1, 会社設立に伴う費用
会社を設立するにはまず、定款の作成と登録費用として約50,000円がかかります。(電子定款なのか紙なのかによって変わります。)また、法人として登記する費用として、150,000円がかかります。会社の代表印や銀行印、角印なども用意しないといけないため、諸々合計で25万円ほど用意しておくべきです。
1-2, オフィス関連経費
オフィスを借りる場合には、賃貸契約を結ぶため、保証金(敷金)、礼金、保証会社委託料などがかかります。起業をする時にいきなり立派なオフィスを構える人は少ないと思いますが、登記をするにあたっては所在地の登録が必須で、通常の賃貸マンションでは登記NGとなっているケースがほとんどです。そのため、月額4.5万円程度のシェアオフィスや、サテライトオフィスを借りて登記するケースが近年は多くなってきています。その場合でも初期登録料として約15万円はかかると思っていてください。
1-3, 運転資金
最初から事業がうまくいくケースは稀ですので、売上が立たなくてもしばらくは経営を続けられるだけの資金を持っておく必要があります。経営が軌道に乗り売上が上がってきている状態の会社では、売上の3ヶ月分の現金を持っておくことをオススメしますが、起業し間もない段階では、仮に売上が0でも自分一人が3ヶ月は生きていけるだけの資金を持っておくといいでしょう。
1-4, その他
その他にかかる経費としては、税理士事務所や社労士事務所に支払う顧問料があります。会計周りは自分自身でやることもできますが、どちらも月に数万円の費用のため、それを自分でやるのなら本業を軌道に乗せることに集中した方がいいでしょう。
2, 金融機関からの融資
それらの資金を調達するためには多様な方法があります。まずは融資を受けるにあたって一番一般的な金融機関を紹介します。
2-1, 銀行
銀行は資金調達の強い味方ですが、起業の段階で融資を受けるのは非常に難しいです。
銀行からのプロパー融資(銀行から直で借入をすること)には基本的に3期分の決算書が必要となるため創業/開業資金の調達は難しいです。一方で、創業後売上が立ち順調に経営ができているようであれば、3期経っていなくても保証協会を通して銀行からの融資を受けることが可能なため、相談をしてみましょう。
2-2, 信用金庫
総じて銀行よりも融資の条件は緩いですが、こちらも起業の段階での利用は難しい金融機関です。信用金庫はエリアによって貸付の条件や制度が異なりますので、会社を登記した住所の最寄の信用金庫に相談してみましょう。
2-3, 日本政策金融公庫
起業時の資金集めにもっとも有効なのは日本政策金融公庫だと思います。
日本政策金融公庫には創業時を支援する様々な制度があります。その代表的なものは、「新規開業資金」という制度と、「新創業融資制度」というものです。これらはそもそも、起業や開業をする方に融資をするためにできた制度で、無担保・無保証人で借りられるものや、金利も低いものが多く、非常に利用しやすい制度です。
新創業融資制度であれば、無担保無保証、連帯保証人なしでも3,000万円(うち運転資金としては1,500万円)まで借り入れることが可能です。
また、日本政策金融公庫は政府機関のため、安心して利用できることも特長です。
↓新規開業資金で融資を成功させるコツはこちらをご覧ください↓
3, 個人で借入を行う
法人での借入が難しい場合には、個人で借入や資金調達をし、それを法人に貸し付けるという方法があります。トラブルの元になったり、金利が高くなることが多いのであまりお勧めはしませんが、背に腹は変えられない時もあるので頭に入れておくようにしてください。
3-1, 個人借入
個人として金融機関から借入をする方法です。
個人で借りたものをそのまま会社のお金として使うことは会計上の処理ができないため、「個人で借りたお金を法人に貸付け、それを法人で会計処理する」ということになります。起業の段階においては、設立する法人よりも個人の与信の方が強いケースが多いため、それを利用して借入をすることになりますが、金利が高くなることがほとんどなので可能であれば使いたくない手段です。
3-2, 身内や親族、知人からの借入
起業する資金が集められない、創業後軌道に乗らない、売上はあるけどキャッシュフローが悪い時には身内や知人にお金を借りることもあるでしょう。この場合の利点としては、話がまとまればすぐにでもお金を手にすることができて、条件も双方の合意があればすぐに決めることができる点です。
一方で、個人間のためトラブルの元になります。
自分の事業が失敗して、大切な家族や友人に迷惑をかけ、疎遠になったりしないようにしましょう。また個人間といえば金銭貸借契約書など、必ず書面を交わすようにしてください。
4, 株式発行関連
株式を発行して、それを買い取ってもらうことで資金を調達する方法です。
基本的には返済する義務もなく、資金を調達する上で一般的にも行われている方法です。しかし、株式の発行には気をつける要素も多く、その1つが会社の決議権です。株式会社の場合、会社の実権を握るのは代表取締役ではなく株主です。いくら創業者が代表取締役であっても過半数の株式を持つ株主が会社を動かす権利があるため、それこそ代表者の更迭であっても可能になります。そのリスクもあるため、全体の何%の株式を誰に発行するのか吟味する必要があります。
4-1, 社員持株会
株式を使った1つの資金調達方法は、社員持株会の設立です。
これは会社を設立する際に社員の方に株式を買ってもらい、それを資金として使う方法です。例えば、1株1万円で300株発行をし、150株は代表自らが購入をし、残りの150株を1人50株で3人の社員に購入してもらうような状態のことを言います。代表自身に手元資金がなく起業が難しい場合にはよく選ばれる資金調達の方法ですが、株式の比率=経営権を持つ比率となるため、創業者が過半数以上の株を持っておくことが通例です。
4-2, VC(ベンチャーキャピタル)など投資家
最近になり、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家といった言葉をよく耳にするようになってきました。これは、投資家に株を買ってもらいそれを資金として会社を大きくする方法です。投資のため、返済する必要はありません。投資家はお金を出資してくれるだけでなく経営のノウハウを教えてくれたりと、非常に心強い味方となりますが、彼らは投資先が上場や売却をした際にそのキャピタルゲインを得ることが狙いです。そのため、将来性があり大きくなりそうな有望な会社にしか投資を行いませんので、どんな会社でもお願いできるわけではありません。
5, その他資金調達方法
上記で紹介した以外にも資金調達をする方法は色々と存在します。
5-1, 助成金や補助金
助成金や補助金を申請し、それを元手にするケースも多いです。
起業の段階で申請ができるものもあれば、創業後に条件を満たし申請をする制度もあります。
↓サロン経営者の方だけでなく、健全な経営をする上で知っておいた方がいい助成金の制度はこちらで詳しく紹介してます↓
5-2, クラウドファウンディング
クラウドファウンディングで、起業をするための資金を集める方も最近は増えてきました。
クラウドファウンディングとは、自分の事業やプロジェクト、商品を応援してくれる方をネット上で集め、出資者側へのリターンを設定、1口いくらという形で出資を募ります。
代表的なものとしてはCAMPFIREがあります。
動物病院を立ち上げるための資金を集めていたり、スポーツサプリメントを製造するための出資を募っていたりと、幅広くいろいろなプロジェクトが掲載されていますので一度覗いてみると面白いかもしれません。
6, 起業にかかる資金を節約する方法
最後に、起業にかかるお金を節約する方法を何点かお伝えします。
6-1, 固定費の削減
何よりもオフィスにお金をかけないことです!
華やかでかっこいいオフィスを持つのはまだまだ先。まずは登記OKの物件に引っ越しをして住居兼オフィスにするか、コワーキングスペースやレンタルオフィス、シェアオフィスを借りて費用を最小限に抑えましょう。また、シェアオフィスではプリンターや文房具などを借りることができるため、何かと便利です。(私の場合には、知り合いの会社の空きスペースを利用させてもらってました…)
6-2, お金をかけるところとそうでないところの見極め
全てを節約すればいいわけではありません。創業時にやりがちな失敗としてあげられるのは、会計面を全て自分でやってしまうことです。売上、支出、経費の管理は自分でやれないこともないのですが、かなりの手間がかかります。税理士事務所にお願いしても月に2.3万円ほどですので、それであればお願いをしてしまい、自分の時間は事業を大きくすることに使うべきです。
7, まとめ
起業にかかる資金とその調達方法についてお伝えしました。
創業当初はお金の悩みでいっぱいだと思います。あなたにあった調達方法を見つけて健全な経営をできるようにしてくださいね。