助成金に関しては聞いたことはあるけど、よく分からないし申請をしたこともない、という方がほとんどだと思います。それは非常に勿体無いことです!うまく利用すれば1年で数百万円単位で助成金が得られることもあり、サロン経営が健全化しますので、ぜひこの記事で学んでみてください。

1, 助成金とは

助成金とは、ある一定の条件を満たせば国からもらえるお金のことであり、返済は不要です。
助成金の原資は雇用保険ですので、雇用を拡大したり、スタッフの労働環境を改善するような制度を設けることで助成金がもらえるパターンが多くなってます。

また、その条件を満たしさえすれば、個人であろうが法人であろうが、どんな業種であっても助成金を得ることができます。理美容室やサロンは求人や育成に困るケースが多いですし、助成金の申請はお金をもらえるだけではなく、社内の労働環境をもう一度考えるいいきっかけにもなります。

1-1, 助成金を申請し受け取れる条件

大前提として助成金を受け取るためには、

・雇用保険に加入していること
・就業規則があること
・会社都合での退職者を出していないこと
・納税義務を果たしていること

この4つが必要です。この4つを満たした上で、各種助成金の条件をクリアしなければなりません。

開業に当たって必要書類が提出できていないと、必要な納税ができていない可能性もありますので、こちらで確認してみてください。<念願の美容サロン開業!必要な税務手続きやその後の申告について>

どれも会社やサロンを運営していく上では最低限必要なことになりますが、開業間もない段階や1店舗だけ運営している状態ではなかなか気が回らずおろそかになってしまっているケースもあるかと思いますので、改めて確認をしてみてください。

2, 美容室やネイルサロンなど美容サロンに役立つ助成金5選

助成金の制度は毎年変更されます。
今まで適用されていたものがそうでなくなったり、新しく増えたりすることもあれば、受け取れる金額が変更になるケースもあります。ここでは、理美容室、ネイルサロン、マツエクなど美容サロンにとって使いやすい助成金の制度と申請方法をまとめます。

2-1, キャリアアップ助成金(正社員化コース)

助成金の中でも代表的なものが「キャリアアップ助成金」です。キャリアアップ助成金には3つのコースがありますが、理美容サロンに適しているのは正社員化コースです。

2-1-1, どんな制度なのか

「キャリアアップ助成金」は、アルバイトさんなど有期契約労働者や派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者のキャリアアップと労働環境改善のため、正社員化、人材育成、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度です。

簡単にいえば、アルバイトからスタートしたスタッフを教育をしながらキャリアアップをさせ正社員にしていく、といったことに対しての助成金です。

この制度のいいところは、新しく何かを始めないといけないわけではなく、通常通りスタッフを雇って正社員化をしていく流れの中で助成金の申請ができることです。これを知っていれば、数百万円の申請ができたのに…とならないためにもすぐに準備をしましょう。

2-1-2, いくら支給されるのか

条件 一人当たりの支給額
有期雇用→正規雇用 570,000円
有期雇用→無期雇用 285,000円
無期雇用→正規雇用 285,000円 

支給される金額は上記の通りで、3種類を合わせて合計15名までが年間で申請できる条件です。その他、労働の生産性をあげるなどの条件をクリアすると、上記以上に支給額が増えます。

2-1-3, 助成金を申請できる事業主の条件

  資本金の額 常時雇用の労働者の数
小売業 5,000万以下 50人以下
サービス業 5,000万以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他 3億円以下 300人以下

各業種ごとに、資本金の額または、雇用者の数が表の通りである必要があります。

2-2, 人材開発支援助成金(旧キャリア形成助成金)

人材開発支援助成金とは、人材の育成や教育に力を入れている事業主に対して、支給される助成金の種類です。大きく分けて2種類あり、「キャリア形成支援制度導入コース」と「職業能力検定制度導入コース」があります。

2-2-1, どんな制度なのか

簡単にまとめると、スタッフの技術向上や必要資格の習得のために、休暇制度や短時間労働の制度を設けたり、社内検定制度を用意した場合に助成金を申請できる制度になります。

2-2-2, いくら支給されるのか

対象となる制度 受け取れる助成金の額
キャリア形成支援制度導入コース 475,000円
職業能力検定制度導入コース 475,000円 

どちらのコースも同じ金額が助成金として受け取れます。

2-2-3, 助成金を申請できる事業主の条件

事業主としての条件は上記のキャリアアップ助成金と同じですが、
キャリアアップ助成金と大きく異なる点は、単に1人の社員に適用すればいいというわけではないという点です。企業の規模によりますが、社員の●人以上の人が教育の対象とならないとこの助成金は受け取れないので留意する必要があります。

社員数(被保険者数) 最低適用人数
50人以上 5人
40人以上、50人未満 4人
30人以上、40人未満 3人
20人以上、30人未満 2人
20人未満 1人

美容サロンのスタッフにおいては、技能研修や資格取得も大切になりますので、スキルアップの一環としてこの助成金も申請しておきたいところです。

2-3, 企業内人材育成推進助成金(個別企業助成コース)

企業内人材育成推進助成金とは、従業員に教育訓練、職業能力評価、キャリア・コンサルティングなどを計画的に実施する制度を導入し、継続して人材育成に取り組む事業主を支援するために生まれた助成金です。

この助成金には色々なコースがあるのですが、その中でも、個別企業助成コースにある「技能検定合格報奨金制度」がサロン経営にはオススメです。

2-3-1, どんな制度なのか

従業員に技能検定を受検させる計画を作成し、技能検定の合格者に報奨金を支給することが要件です。美容室や、ネイルサロン、エステサロンなどの美容サロンは、資格の習得や、技能検定も大切になりますので、スタッフのスキルアップの過程で受け取れる助成金になります。

2-3-2, いくら支給されるのか

制度 制度導入助成金 実施/育成助成額(1人あたり)
技能検定合格報奨金制度 200,000円  50,000円

このようになっています。1人あたりで50,000円の助成額になりますので、多くのスタッフに適用できればその分金額も大きくなります。

2-4, 職場定着支援助成金(雇用管理制度助成)

職場定着支援助成金とは、雇用管理制度の導入などを通じて従業員の離職率の低下に取り組む事業主に対しての助成金です。わかりやすくお伝えすると、会社に新しく離職率を低下させられるような制度を設けることに対して支払われる助成金です。

美容サロンを経営していると、どうしてもスタッフの定着に悩むことがあると思います。
制度を設けて定着率をあげられるだけでなく、それに対して助成金をもらえるため非常に使い勝手がいい制度となります。

2-4-1, どんな制度なのか

職場定着支援助成金の中でも雇用管理制度助成という制度がサロンにはぴったりです。
評価・処遇制度、研修制度、健康づくり制度、メンター制度、短時間正社員制度(保育事業主 のみ))の導入・実施を行った場合に助成金がおり、またそれにより実際離職率が下がった場合に更に追加で助成金がおります。

2-4-2, いくら支給されるのか

制度導入助成 目標達成助成
評価・処遇制度 100,000円

 

 

600,000円

研修制度 100,000円
健康づくり制度 100,000円
メンター制度 100,000円
短時間正社員制度 100,000円

制度を作ることによって、10万円の助成金がそれぞれおります。
また、その制度によって実際に離職率の改善が見られた場合には、60万円の助成金が別で支給されます。

2-4-3, 助成金を申請できる事業主の条件

各制度によって様々です。
計画を作成し、労働局長の認可を得なければなりませんが、その際にチェックをされる項目は多岐に渡りますので、詳しくは厚生労働省の公式ホームページをご覧ください。

2-5, 創業補助金

「創業補助金」は、新たな需要や雇用の創出等を促し、経済を活性化させることを目的に、新たに創業する者に対して創業等に要する経費の一部を助成する助成金の制度です。

2-5-1, どんな制度なのか

創業時に受けられる助成金の制度のため、開業資金に充てることができます。
雇用の創出を目的としている助成金のため、従業員を1名以上雇わなければいけないことには注意が必要です。

2-5-2, いくら支給されるのか

創業時の状況 支給額
外部資金調達がない場合 50万円以上100万円未満
外部資金調達がある場合 50万円以上200万円未満

銀行など金融機関から融資を受けるなどして、外部資金調達がある場合とない場合で支給額が異なります。どちらにおいても、お金の苦しい創業期には非常に助かる金額なので申請を忘れないようにしましょう。

2-5-3, 助成金を申請できる事業主の条件

中小企業庁のホームページには次の通りの記載があります。

以下の1,および2,を満たす者です。 
1, 募集開始日(平成29年5月8日)以降に創業する者であって、補助事業期間完了日までに個人開業又は会社(会社法上の株式会社、合同会社、合名会社、合資会社を指す。)・企業組合・協業組合・特定非営利活動法人の設立を行い、その代表となる者
2, 事業実施完了日までに、計画した補助事業の遂行のために新たに従業員を1名以上雇い入れる者

これから創業をする人で、且つ従業員を雇い入れれば基本的に条件はクリアです。

3, まとめ

理美容室やサロンが申請をしやすい助成金についてまとめました。
申請忘れをなくして、助成金をうまく利用し、サロン経営に役立てましょう。